「実態に即した仕事のやり方を自ら設計・構築し、適用しながら改善する」
これは、国内でBPM促進活動を行う日本BPM協会による「ビジネスプロセス管理」の定義です。非常にシンプルかつ的を得ている表現なのではないかち思います。
(引用:日本BPM協会「BPMとは」)
ビジネスプロセスを設計するという概念は兼ねてより存在し、古くは1950年代の「QC(品質管理)」にまで遡ります。そして1990年代に本格的な業務改革手法である「BPE(ビジネスプロセス設計)」や「BRP(ビジネスプロセス再設計)」が登場し、現在のBPMを構築するに至っています。
BPMは現在、多くの企業にその改革手法が求められている反面、その意義や目的、あるいは手法などが曖昧に理解されていることが少なくありません。正しいBPMを推進していくためには、BPMの正しい知識が不可欠です。
本記事ではBPMの本質を理解したいただくために、BPMを実践する意義や目的、そしてBPMが現代に求められている背景などについて紹介していきます。
BPMとBPMシステムの関係性について
ここではまず概念としてのBPMとITシステムとしてのBPMについて知っていただきます。
冒頭でも紹介しましたがBPMとは「実態に即した仕事のやり方を自ら設計・構築し、適用しながら改善する」という業務改革手法であり、それを実現するためのツールがBPMシステムとなります。つまりBPMが改善を行うための方法で、BPMシステムはその手段です。
当たり前のように思える2つの違いをなぜここで説明しているかというと、BPMシステムさえ導入すればBPMは成功すると考えている企業が非常に多いためです。確かにBPMシステムはBPMを遂行するための手段ですが、BPMシステムを導入したからといって必ずしも取り組みが成功するわけではありません。
第一にBPMという概念をしっかりと理解して、具体的な手法などを身に付けておくことが大切です。
BPMの進め方
では具体的にBPMをどのようにして行うかというと、まずはBPMN(ビジネスプロセスモデリング表記)※というモデリング表記法を使用して「ビジネスプロセス図」を作成します。
ビジネスプロセス図とは各業務プロセスの開始から終了、または部門間にまたがる業務プロセスを体系的に明示し、社内業務を洗い出すためのフレームワークです。恐らく、BPMへの取り組みにおいて最初につまずくポイントでしょう。
ビジネスプロセス図作成で重要なことは改善すべき業務プロセスに優先順位を付け、優先度に応じて特定の業務プロセスをそれに関連する業務プロセスを決めることです。組織にまたがる全ての業務プロセスを一度にモデル図化しようとすると、莫大な時間を浪費することになります。
何事も大規模な取り組みを行うよりも小規模スタートで始めることが大切なように、BPMもスモールスタートを心がけることが大切です。
ビジネスプロセスをどう再設計していく?
次の課題はモデル図化したビジネスプロセスをどう再設計していくかですが、再設計と言っても基本的な改善ポイントは限られており、次の8つが主な改善ポイントとなるでしょう。
- 統合・廃止
- 簡素化・削除
- 確実化・厳密化
- 集約・集中
- 分散化・自己責任化
- 連携・同時処理
- 効率化・自動化
- 標準化・パターン化
詳しい内容については「BPR(ビジネスプロセスリエンジニアリング)の失敗ケースと成功へのヒント」をご覧ください。
各ビジネスプロセスをさらに細分化し、細かい業務ごとに上記8つの改善ポイントを見つけることで最適化を行っていきます。
「改善」以外の方法ではアウトソーシングによるBPMを行う企業も多いでしょう。一部の業務をアウトソーシングすることで業務改革を行えるケースも多く、BPMを大義名分にビジネスプロセスを外部に委託するのも有効的です。
しかしその際は、アウトソーシングによって本当に改善されるのかを慎重に測定する必要があります。BPMシステムを活用して改善を行っていくのであれば業務プロセスのモニタリングなどで継続的に改善を行っていくことも可能ですが、アウトソーシングでは契約内容によっては容易にビジネスプロセスを変更できないケースが少なくないのです。
モニタリングとPDCAサイクルの重要性
BPMを実践していく上で最も需要となるのが再設計した「ビジネスプロセスのモニタリング」と「PDCAサイクルを回す」ことです。
例えば生産管理工程における改善業務では、立案した改善を適用してからそれが正しく機能しているかを監視します。監視の結果問題があればそれを分析した新たな改善立案、問題がなければさらに改善をブラッシュアップしていくというPDCAサイクルを回していきます。
BPMもこれと同様にビジネスプロセスの「監視とPDCAサイクル」が重要であり、継続的に業務改革を行っていくことにこそBPMの本質があるのです。
BPMを促進する真の目的とは
BPMへ取り組む目的としてよく「全体最適化で業務効率性をアップし、コスト削減や業務のスピード化を促す」といったことが語られます。これ自体は間違いではありませんが、BPMを促進する真の目的は他のところにあります。
それが、「日々激しく変化するビジネス社会に対応するため、業務課題の察知と業務変化を迅速に行い、経営環境に変化にも柔軟に対応する組織能力を養う」ことです。
つまりBPMは業務効率化といった直接的な導入効果を狙うだけでなく、競争環境においても勝ち残るための組織力を養うために促進するというのが正しい目的となります。もちろん、BPMを促進する目的は企業によって様々ですが、根本にこの目的があるかないかで導入効果は大きく違ってきます。
今、BPMが注目されている背景とは
前項で既に答えが出ているようなものですが、現在BPMが注目されている理由には「日々変化するビジネス社会」という時代背景があります。
インターネットとコンピュータの普及、スマートフォンやタブレットの実用化、クラウドサービスの爆発的な浸透、そしてIoTデバイスの急増など、企業や消費者を取り巻く環境は年々変化しています。これは、商品やサービスを提供する我々ビジネスマンの経営環境も変化しているということと同義です。
常に変化の連続であるビジネス社会に対応していくためには、柔軟な組織能力が不可欠であり、こうした背景からBPMが強く求められるようになりました。
また、BPMを実現するためのソリューションが豊富に提供されているという点も、BPM市場の拡大に拍車をかけています。
まとめ
BPMは必ずしも自社に利益をもたらす「打ち出の小槌」ではありません。使い方を間違えれば、金銀財宝があふれ出る小槌も命を奪いかねないように、BPMも正しく行うことで初めて導入効果を得ることができます。ですので、皆さんにはまず、BPMについて正しい知識を付けてもらい、時に導入パートナーやコンサルタントと一丸となってBPM実現を目指していただきたいと思います。
BPMやBPMシステムに関しては疑問点などがある場合は、ぜひ一度お問合せください。貴社にとって最適なBPM実現をプランニング致します。