業務プロセスモデルとは、業務、モノ、データの流れを図式化/明文化したもので、通常は目に見えないビジネスの流れを可視化することを指します。現在ビジネスプロセス管理に取り組んでいる企業は多いでしょうが、そのほとんどが業務プロセスモデル作りから始めます。
しかし、「専門的な知識が必要」という認識から、業務プロセスモデル作りに苦手意識を持つ企業も多いようです。実際は、それほど難しいものではなく、一定の基礎知識をITソリューションによって簡単に作成することができます。
そこで今回は、実は簡単にできる業務プロセスのモデリングについて解説します。
BPMの基本はAs-IsモデルとTo-Beモデルの繰り返し
「As-Is」とは現状を示す言葉であり、つまりAs-Isモデルとは現状の業務プロセスかをモデル化したものを指します。そして「To-Be」とは対象の理想的な状態という意味があるため、業務プロセスのあるべき姿をモデル化したものと言えます。
BPM活動の基本は、このAs-IsモデルとTo-Beモデルの繰り返しです。
どういうことかというと、まず現行の業務の流れや進め方をAs-Isモデルとしてモデル化します。完成したAs-Isモデルは改善対象となります。そしてAs-Isモデルに修正を加え、業務プロセスのあるべき姿であるTo-Beモデルを作成します。
To-Beモデルに沿って改善策を実施します。モニタリングの結果からTo-Beモデルの問題点を抽出して、実行されたTo-Beモデルは現行のAs-Isモデルとなり、さらに修正を加えてTo-Beモデルを作成していきます。
この一連の流れを繰り返していき、業務プロセス改善を行うのがBPM活動です。「業務プロセスのモデル化に始まりモデル化に終わる」と言っても過言ではないでしょう。
BPM活動にとって業務プロセスのモデル化が如何に重要かが理解いただけるのではないでしょうか。
業務プロセスをモデル化するいくつかの手法
業務プロセスをモデリングするためにはいくつかの方法が存在します。企業は特定のモデリング手法を用いて、業務プロセスをモデル化していくことになるでしょう。
図式を用いてモデリング
図式を用いて行うモデリングは、組織の誰もが共通言語として、業務プロセスを理解するためにあります。恐らくですが、BPM活動において最も苦労するのが図式によるモデリングでしょう。
図式で表すモデリングにはBPMI(ビジネスプロセスモデリング表記)やEPC(イベントドリブンプロセスチェーン)などがあります。いずれも記号や線によってモデリングを行い、業務プロセスを図で表すことで見えない流れを可視化します。
中でもBPMIは特に広く使用されているモデリング手法で、世界標準(ISO19510)にもなっています。
テキストフォーマットによるモデリング
人間が理解しやすいように図式形式にモデリング手法があれば、「コンピュータが理解しやすいテキストフォーマットによるモデリング手法」も存在します。
BPEL(ビジネスプロセス実行言語)とXPDL(プロセス定義言語)は、その代表的なモデリング手法です。
BPELはXMLに基づいて開発されており、Webサービスを使ったプロセスをデザインするための実行言語です。従ってアプリケーションを統合し、プロセスを自動的に実行するのに向いています。
一方XPDLは、BPM関連製品の各データファイルお相互変換すべく開発されたプロセス定義言語です。
どちらもコンピュータに業務プロセスを理解させるためのモデリング手法として優れていますが、BPELはBPMLで描画したモデル図を実行言語として落とし込めるという特徴を持ちます。
全てではありませんが、To-beモデルとして作成したモデル図をそのままシステムに落とし込むことで、モデリングから新たな業務プロセスモデル実行までの時間を大幅に短縮することが可能です。
BPM活動におけるモデリングの基本とは
BPM活動においてまず取り組むのがモデリングですが、多くの企業が陥りがちなケースが「全ての業務プロセスのモデル化を目指す」ことです。企業ごとに抱える業務プロセスは異なりますが、いずれにしろ巨大かつ複雑な業務プロセスを構築していることに変わりありません。
それら全ての業務プロセスをモデル化するとなると、かなりの時間を費やしてしまいBPM活動自体に頓挫してしまう企業も珍しくないのです。
このためBPM活動での業務プロセスモデリングは、必ずしも大規模である必要性はありません。むしろ、特定の業務プロセスをそれに関連する業務プロセスのみをモデル化することで、活動時間を短縮し早期的に効果を得ることができます。
ちなみに「特定の業務プロセス」とは、企業が問題点として強く懸念している、あるいは優先的に改善を加えるべき業務プロセスのことです。
こうして完成したAs-Isモデルに修正を加えてTo-Beモデルを作成するわけですが、ここでも「完璧」を求めるのは厳禁です。
細かい修正を加えて業務プロセスを再設計を行っていくことは一見良いことのように思いますが、実際は失敗したときに反動(リスク)を高めています。
そもそも作成したとTo-Beモデルに基づいて業務プロセスを実行したとしても、いきなり成功することは非常に稀です。何度かの繰り返しを経て、継続的に改善していくことがBPM活動の本質だと言えます。
入念に狙いを定め時間をかけて打った一発よりも、ある程度の狙いが定まった時点で打って修正していく数発の方が早く的に当たることが多いのです。
日常的な業務改善にもモデリングは使えます
BPMIなどによってモデル化した業務プロセスをBPM活動に限定した利用するのは、非常にもったいないことです。せっかく複雑な業務プロセスを可視化したのですから、現場従業員に気付きのきっかけを与える環境を用意することもできます。
例えばモデル化した業務プロセスを各部門に配布すれば、各従業員は個人単位での改善点に気付くことができるかもしれません。こうした、意図的に業務改善を促すのもBPMの一環だと言えます。
BPMシステムでモデリングを行おう
BPMIやBPELは、比較的簡単に業務プロセスをモデリングするための規格です。しかし、複雑極まりない企業も業務プロセスを人手によって全てモデル化することはかなり困難でしょう。
そこで検討いただきたいのがBPMシステムの活用です。
BPMシステムには「モデリング機能」があり、世界標準でBPMIをグラフィカルに作成できる機能が備わっています。また、不定期に発生する非定型処理についても定義することができ、業務プロセスの最適化を支援します。
この他にも「ビジネスプロセス分析機能」や「モニタリング機能」によって、企業のBPM活動を助けてくれます。
まとめ
BPM活動において、業務プロセスのモデリングは非常に大切です。しかし、だからといってそこばかりに時間をかけると言いというわけではありません。できる限りスピーディにAs-IsモデルとTo-Beモデルを作成し、素早く実行に移して素早いPDCAサイクルを回すことが何よりも重要です。