ビジネスプロセス管理システムもワークフロー管理システムも、いずれも社内業務を効率化させるためのITツールです。このためBPMシステムとワークフローシステムを混合して感がてしまっている方が少なくありません。
よく「BPMシステムは製造業の業務プロセスを改善する」と説明されることもありますが、これも正確とは言えません。そもそもBPMシステムは製造業に限らずあらゆる業界業種にフィットするITツールだからです。
今回はBPMシステムに対する誤解をとくためにもワークフローシステムのとの違いや、正しい情報を紹介していきます。
「ビジネスプロセス」と「ワークフロー」という言葉の違い
BPMの主体でもある「ビジネスプロセス」という言葉と「ワークフロー」の違いは非常に曖昧だと感じることもありますが、実際には明確な違いが存在します。
まずワークフローに関してですが、これは様々な仕事を遂行する上で発生する承認・決裁の流れを明示したものと定義されています。講義では「業務の起点から終点」を指す言葉ですが、「承認・決裁フロー」という意味合いで使用されていることの方が圧倒的に多いでしょう。
対してビジネスプロセス「業務プロセス」や「事業プロセス」と訳されることが多く、ワークフローよりも大規模な業務の流れを指しています。受注プロセスや製造プロセスなど各企業によって利益に繋がるものであり、その中にはワークフローのような承認・決裁フローが含まれていることもあります。
従ってワークフローは承認・決裁フローに限定した概念で、ビジネスプロセスはより大規模な業務の流れを表したものと理解するのが妥当でしょう。
システム面での違い
ワークフローを管理するのが「ワークフローシステム」でビジネスプロセスを管理するのが「BPMシステム」ということは言うまでもなく、重要なのは機能や特徴など何が異なるかという点です。
まず、ワークフローシステムは人間のみによって処理されることを想定しています。ワークフローを回すのも承認・決裁を行うのもあくまで人間ですので、人手による処理がなければ進みません。
一方BPMシステムは人間による処理と並行して「業務アプリケーションによる処理」も行います。また、ワークフローシステムが直列的なフローを構築するのに対し、BPMシステムは複雑な条件分岐やループなども想定されています。
共通する機能
ワークフロー機能:次のタスク処理者を認識してフローを回す
フォーム作成機能:処理内容に応じて入力フォームを生成する
BPM特有の機能
モデリング機能:BPMNに準拠した表記法でビジネスプロセスのモデル図を作成する
モニタリング機能:展開したビジネスプロセスの監視と効果測定を行う
ビジネスルール機能:複雑なビジネスルールの管理を行う
ケースマネジメント機能:非定型処理をパターン化して管理する
外部コネクター機能:様々な外部システムと連携する
プロセス分析機能:ビジネスプロセスを分析したボトルネックを洗い出す
BPM特有の機能の中でも特に重要なのが「モデリング機能」です。
世界標準(ISO19510)であるBPMNを採用したモデル図作成は専門的な知識と経験が必要となります。BPMシステムを用いればGUIベースで直感的なモデリングを行うことができ、一般ユーザーでもビジネスプロセスのモデル図を作成することができます。
BPMシステムを導入する目的とメリット
BPMシステムを導入する企業の目的は様々なものがあり、ここではその一部を紹介します。
属人化している多くの業務を標準化したい
企業には特定の社員のみが遂行できる「属人化した業務」というのが必ずと言っていいほど存在します。属人化した業務はビジネスプロセスの円滑な流れを妨げ、組織全体の業務に影響を及ぼす可能性もある危険因子です。
BPMシステムを導入する企業の多くが属人化した業務を改善したいと考えており、全体に標準化することで円滑な業務の流れを構築します。
業務進捗をモニタリングしたトラブル発生を事前に察知したい
BPMSシステムで提供されているモニタリング機能は、システム上でビジネスプロセスの進捗度をリアルタイムで監視することが可能です。そのためトラブル発生を事前に察知したり、問題のあるプロセスを迅速に抽出することができます。
現状の業務プロセスを洗い出し非効率性を排除したい
BPMNなどの表記法を活用して独自にモデル図を作成することは難しいのが現実です。学習云々の話だけではなく、システムによる支援なしでモデル図を作成することは多大な時間を費やします。
BPMシステムを活用すれば効率的かつ正確なモデル図を作成し、業務プロセスを洗い出すことができます。
非定型処理をパターン化して共有化したい
企業には定型的に発生するビジネスプロセスと、クレーム対応や受注生産など非定型処理のビジネスプロセスも数多く存在します。しかし、非定型処理をパターン化することは非常に難しく業務を標準化することも容易ではありません。
BPMNシステムでは「ケースマネジメント機能」により非定型処理のビジネスプロセスをパターン化し、共有することで全体最適化を図ることができます。
ワークフローシステムを導入する目的とメリット
一方でワークフローシステムを企業が導入する目的とメリットはどのようなものがあるのでしょうか?
社内承認フローを整理した効率的な流れを構築したい
承認フローが定まらない状態は日々の業務が非効率化し様々な場面で支障をきたします。効率的な承認フローを構築するためにワークフローシステムが必要です。
承認の滞りを無くすよう社外にいても承認できる環境を整えたい
決裁者が頻繁に外出するため承認がなかなか進まないというケースも少なくありません。こうした場合はクラウド環境でワークフローを構築すると、社外からでも承認が行える環境を構築できます。
デジタル化された承認フローで管理者負担を軽減したい
また、システム上でデジタル化された承認フローは日々様々な承認依頼が届く管理者の負担軽減にも繋がります。
BPMシステムとワークフローシステムでは導入する目的も効果も違う!
今回紹介した内容を総じて言えば、BPMシステムもワークフローシステムのその意味するところや目的、導入効果なども全てが違います。つまり両システムを混同したままでは正しいITツール導入はできないということにもなるので、本記事でBPMシステムとワークフローシステムの違いについて知っていただけたのであれば幸いです。
また、必ずしもBPMシステムがワークフローシステムのような機能を包括しているわけではありません。システム導入の際は製品ごとの特長までしっかりと把握し、自社に最適なシステムを導入することが大切です。
まとめ
いかがでしょうか?現在、自社のビジネスプロセスに疑問を持ち改善したいと考える企業は多いかと思います。多くの企業が今まさに転換期を迎えている時代であり、そこにはBPMシステムの導入とBPMへの取り組みが欠かせないでしょう。
既存のビジネスプロセスを一度破壊し迅速に再構築するということは、BPMシステムでしか出来ない事です。BPMシステムでぜひ業務改革を成功させ、新たなビジネスプロセスを整えていただきたいと思います。