ビジネスプロセス管理(BPM)とは、既存の業務プロセスを可視化し再設計することで全社的な業務改革を成し、企業の生産性や収益性などをアップさせていくための経営手法です。日本国内でこのBPMへ取り組んでいる企業はまだまだ少なく、今後多くの企業にとって重要な課題となるものでもあります。
特に受注生産型企業や個別サービスを展開する企業など顧客の仕様にもとづいて業務を遂行するような企業では、以前にも増して細かな要望が求められ、対応に四苦八苦している光景をよく見かけます。
こうした企業にこそBPMは効果的です。非定型の業務を標準化することができれば、イレギュラーな事態にも迅速に対応し業務効率性を上げていくことが可能です。
業務効率性がアップするということはコスト削減や顧客満足度向上にも繋がり、最終的には収益性のアップになるので非常に重要な課題の一つですね。
実際にBPMへ取り組み、成功している企業ではどのような効果を得ているのでしょうか?
今回はBPMアウトソーシングを利用して企業事例をもとに、業務プロセスの”ムダ”やBPMソリューションについて紹介していきます。
参考サイト:株式会社アイネス「BPMでこんなに変わる!業務遂行の確実性を高める導入事例をご紹介」
BPMアウトソーシング事例
「BPMをアウトソーシングする」ということはつまり、コンサルティングを利用したりBPMソリューションを導入するという意味です。実は、BPMへの取り組みはそう簡単なものではなく、システム化を伴うケースも多いので社内リソースだけでは対応できない可能性があります。
例えばITアウトソーシング事業を中心に展開するA社では、業務プロセスに関する大きな問題を抱えていました。A社はバッチやオンラインサービス、プリント・封入封緘・配送など幅広いサービスを提供していることで業務プロセスが分断化されていました。
顧客からの多種多様な要求にもとづき担当SEが紙ベースの指示書を作成、運用部門が受領しさらに必要に応じて関連会社のプリント部門に作業委託を行います。
このため部門間の情報伝達に時間がかかり過ぎてしまったり、担当SEからの進捗確認にリアルタイムで答えらえなかったりなど顧客へのサービスビリティが低下してしまう原因が多数存在していたのです。
また、紙ベースの指示書は様々な業務に対応する汎用フォーマットでしたが、記入ミスを誘発することもあり手戻りが発生するケースも少なくありませんでした。
A社はこうした業務課題に対し、BPMソリューションを導入し業務プロセスをシステム化することでBPMへの取り組みを成功させています。
スループットを50%短縮!
優先的に解決すべきだった「紙ベースの指示書」の課題に対しては多種多様な依頼内容をパターン化し、パターンごとに申請に必要な入力項目を必須項目としてフォーム(入力画面)をいくつか作成しています。
これにより紙ベースで発生していた手戻りが激減し、かつ情報伝達の正確性を向上させています。
さらに外部ネットワークからもシステムにアクセス可能にしたことで進捗確認をリアルタイムに行え、最終的には依頼から業務完了までのスループットを50%短縮に成功しました。
業務プロセスに存在する様々な“ムダ”
A社が取り組んだBPMに限らず、多くの企業がBPMを成功させる上で重要なポイントが「業務の“ムダ”」を無くすことにあります。
トヨタ生産方式で紹介されている「7つのムダ」をご存知でしょうか?
- 加工のムダ
- 在庫のムダ
- 造りすぎのムダ
- 手待ちのムダ
- 動作のムダ
- 運搬のムダ
- 不良・手直しのムダ
引用:Kaizen Base「7つのムダとは【トヨタ生産方式基礎講座 初級編:第7章】」
世界の自動車会社トップでもあるトヨタではこうした業務の“ムダ”に着目し、これらを徹底的に排除することで業務効率性と生産能力を高めています。トヨタ生産方式における7つのムダは製造工程での非効率性を指したものですが、製造業以外の業務プロセスでも様々な業務のムダが存在します。
- 過剰な機能によるムダ
- 過剰なリソースによるムダ
- システム化に伴うムダ
- 分断化された環境によるムダ
- 情報伝達の遅延によるムダ
- 情報の正確性に欠けるムダ
- 情報の間違いによるムダ
- 不正確な要求によるムダ
- 手戻りによるムダ
- 不要な管理に伴うムダ
- 風土を重視することによるムダ
- 転記、複製によるムダ
- 不正確な計画によるムダ
- 危機管理の欠如によるムダ
- 作業切替えに伴うムダ
etc…
ざっと挙げただけで、業務プロセスにはこれほどの無駄が存在しています。多くの企業がこれらのムダを放置しているがために、業務効率性を下げ同時に生産性や収益性まで下げてしまっているのです。
そして、多数の無駄を徹底的に排除するためにBPMへの取り組みやBPMソリューションの導入が必要になります。
BPRはダメで、BPMはなぜ有効か?
1993年に出版された「リエンジニアリング革命(マイケル・ハマー、ジェイムズ・チャッピー共著)」でBPR(ビジネスプロセス再設計)という業務改善手法は瞬く間に世界に浸透しました。
BPRとは既存の業務プロセスを可視化し全社的な業務プロセス再設計を行うことで、業務改革を成し遂げるというBPMの前身とも言える概念です。
しかし、BPRは多くの企業がその取り組みに失敗しています。原因は大規模な業務改革に対応しきれなくなり、業務プロセス自体が破たんしてしまったことにあります。あるいは、BPR取り組みのためのシステム開発があまりに大規模なものになってしまい、プロジェクト自体に頓挫してしまった企業も多いでしょう。
ではなぜBPMならば業務改革を成功させることができるのでしょうか?
最も大きな理由はBPMが「小さく始める業務改革」だからです。
BPMへの取り組みではまず足元の課題から照らしていき、そこに落ちている石を取り上げていくように課題を少しずつ解決していきます。時間はかかっても着実に業務改革を遂行していくことで、最終的には大規模な業務改革を成し遂げていくことが可能です。
前述したA社の事例でも改革した部分はわずかです。今後BPMソリューションやコンサルティングの活用によって、さらに大規模な業務改革へと発展していきます。
まとめ
―業務プロセスに存在する“ムダ”は認知していても、その課題をどう解決していけばいいかわらかない―そんな企業が星の数ほど存在します。焦る必要はありません。少しずつ、BPMへ取り組み業務改革をコツコツと行っていけばいいのです。
その際は、BPMソリューションの導入やコンサルティングの利用をぜひご検討ください。独自に行うのは難しいBPM取り組みを円滑にし、効率的に成功へと導きます。
皆さんの企業でも業務プロセスの可視化と再定義へ取り組んでいきましょう。